Masuk42.
第十二話 アキラ、上座を敬う
アキラは興奮が収まらず、仕事が終わってから今日の出来事をユリコに報告した。
「ねえ聞いて、今日すごい奴が来たんだ! 年齢は多分僕たちとそう変わらないんだけど麻雀がすごく強くてさ! なんて言うか、魔法みたいなんだ。どこまで見えているんだろうって思ってしまう。そんな手順なんだよ」とユリコに熱心に話す。
大学生になったユリコは既に麻雀のルールを完全に把握していた。高校生の頃にアキラを理解したい一心で麻雀を覚えたのだ。そういういじらしい一面がユリコにはある。なので、アキラが話す内容を聞いて楽しむ事が出来た。ユリコはアキラの麻雀の話を聞くのが今では毎日の楽しみになっていた。
「へぇ、たとえばどんな麻雀なの?」
「色々あったんだけどすごく印象に残ったのはこれかな」とアキラは言うとペンとメモ帳をポケットから取り出してサラサラと書き出した。
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サイドストーリーLAST 木嶋秀樹の自慢話後編────── ──────「ハンデはあげる。君らは30000点、おれは10000点スタートでいい」「まいりました。兄さん」「おれたちはプロになるよ」「木嶋、おまえも受けてみないか」 ハッ!(なんだ夢か。……ずいぶん前の記憶を見たな。コテツは悪魔のように強かったし、あのケイちゃんを従えたという人間性も凄かったなあ。 ケイちゃんとユースケはずいぶん強くなってプロになったけど、おれはずっとハンパもんだ…でも、それでも…)「……そんな生き方も、悪くはない」とヒデはポツリと呟いた。そしてモニターを見ると丁度先ほどエンディングが終わった所で次回対局の組み合わせを表示していた。「……あー。エンディング見逃したかー」「ヒデちゃんあの歌好きだよな」「ああ、【結果論Happy End】な。あのバカバカしい軽い感じがな。(それでいいじゃないかと肯定してくれてる気がするんだよな)……帰ろ。悪いな今日も寝ちゃって。お勘定」 そう言うとヒデはポケットから財布を取り出して万券を店主に渡した。「いいんだよ、また明日も来てくれよな」「明日は仕事ないから来ないかも。でも雀荘に遊びに行ったら帰りに寄ると思う」
サイドストーリーLAST 木嶋秀樹の自慢話前編「今は時代が変わったよな。おれの常識じゃあノーレート麻雀なんて考えられないし、地上波で真昼間からプロの対局が観られるなんて、そんな時代が来るとは思いもしなかったよ」 酔っ払いながら安い飲み屋でプロ麻雀の放送対局を観ると、決まって男はそう言った。男の名前は木嶋秀樹(きじまひでき)47歳。「ヒデちゃんは麻雀観るの好きだよなあ」「そりゃ、好きさ。だってな、この番組作った人と会ったこともあるんだぜ。……あの頃はハッキリ言っておれは最低な人間だったけどな。でも、今になって考えたら…やあ、やっぱり最低だったよ! ははは! ……お! ケイちゃんは今日トップ取ったんだな。良かったあ。ケイちゃん良かった~。ははっ」(このおじさんいつも丸山圭一郎プロを『ケイちゃん』って言ってるけど、なんなのかな)(分かんない)とヒソヒソと店員さんが話している。ちなみにヒデは地獄耳だ。「あのさ、ケイちゃんとおれはクラスメイトで学生時代から卒業してもずっと、いつものようにつるんでたんだよ。ユースケも一緒の3人組で。バカばっかしてたよ。ほら、今日解説してるコイツ。これ、田中ユースケな」「へえー。おっちゃんスゲーんだなー」「おれはただの何者にもなれなかった男だよ。好きだった麻雀も結局弱いし、惚れた女とも…… 結婚して子供も1人いたのに離婚するし、仕事は転々として続かない……。安アパートで一人暮らしの。ただの猫好きなおやじさ」 うつろな目をしてヒデはそう言った。その顔は決して暗くはなく、むしろ、そんな人生も悪くなかったよな。と言っているようだった。「じゃあ丸山プロとユースケプロの他にも知り合いとかいたりしないの?」「あー、いるいる。スゲえのがいるよ。何を隠
101.エピローグ 勝者たちを讃えて 富士2号店はまたビルメンテナンスの日を迎えていた。何年ぶりだろうか。 そう、第2回富士2号店最強決定戦だ。 今回は財前姉妹や新店長アヤノも加わって女子勢が多くなった。アヤノは看板娘どころではない器の持ち主だった。今では富士2号店の店長なのだ。 もちろん前回優勝のシオリも参加している。今はもう富士メンバーではないアキラも社長に誘われて家族全員で参加した。 前回より大世帯の旅となったがそれを全員連れて行くのもわけないくらい富士2号店は流行っていた。それはそうだろう。何せ麻雀の大ブームを巻き起こしたプラスアルファリーグのその21人の選手たちのうちのなんと9人がここ富士2号店にいるのだから。 富士グループはスタッフのレベルも売り上げも知名度もその全てが日本一の雀荘になったのである。「これも全てマサルの手腕だな。お前を雇って正解だったよ」と中村社長がマサルを褒めた。「あはは、そんなバカな。私は少しアイデアがあっただけで、それが全て良い方向へ良い方向へと進んだのは運でしかない。それよりもコテツとアキラですよ。彼らが私たちをここまで導いたんだと私は思っています」「謙虚だな、相変わらず。だが、それはそうかもしれない。しかし、アキラ君や財前姉妹を雇ったのはマサルだ。これこそが大手柄だろう。寮も女子寮を作ってまで雇い入れて。マサルはやっぱり先見の明があるよ。お前はおれの福の神だ」「そうですかね。メタとアヤノさんの活躍も大きいと思ってますけど」「参加者は決定しましたかー? 決まり次第私に教えて下さいね。トーナメント表作るんで」と女子バイトの鈴沼エリが言った。いや、今は女子社員だが。
100.カラスたちの戯れ 最終話 魂の音楽 アキラの企画したプロ団体は想像のはるか上を行く大人気企画となった。 予想以上の大手がスポンサーに付いてくれたこともありプラスアルファリーグは地上波放送もされる超大人気番組となる。 アキラはここまでうまくいくとは想像もしていなかった。まさか道楽的に企画したものが大当たりしてしまうとは。 そもそも、戦術指南書だってコテツの思想、戦略、技術があまりに素晴らしいものだったから記録に残したいと思ってほんの趣味で書いただけだったのに、それを評価されて出版になり、文章力があるからと小説も書いてみないかと言われて書いたら超絶大ヒット。 雀神コテツに挑むっていう自分自身の青春の話がこんなに読者の心を掴むとは思ってもいなかった。 人生は何がどういうきっかけで化けるか分からない。 ほんの、ちょっとのことで過去全てが救われるような、このルートを辿ってきて良かったと思えるような。そんなことが急に起きる。それはアキラのような超の付く大成功に限った事ではない。例えば、メタ。 アイツはいい奴ではあるが女にはモテないやつだった。その点ではよくコテツやアキラのことをグチグチ言っていた。だが、今はどうだ。 心なしか見た目も健康的に痩せたし、誰かに浮いた話が出ても「へぇ、おめでとう」とか言ってるくらい余裕だ。 今のメタにはアヤノがいるから。 たった1人の愛する人と出会うだけで人生は過去全てが救われるもの。だから、どんな人生でも絶望することはないんだ。救いはいきなり訪れる。逆転劇は常に起こりうる。それが人生という舞台なのである。 あなたを救う人は今日訪れるかも知れないし。来年かもしれない。それは分からないけど、逆転の可能性だけはいつもある。それを忘れないでいれば、いつだって夢を見て明るく生きて行けるだろう。 正しく生き
99.第三十六話 アキラが描く夢の舞台 アキラの書いた麻雀指南書は大ヒットした。重版もかかり、その後アキラは麻雀小説も書く。それが飛ぶように売れてコミカライズ化が決定した。 アキラの書いた物語はあれよあれよと話題になってコミックからそのままアニメ化。実写ドラマ化。映画化。実写映画化。と勢いよく売れに売れて阿佐田哲夜の再来とまで言われた。 ここまで、ツキとは無縁の誰よりも地道で堅実な麻雀をしていたアキラにここぞとばかりの大ヅキが訪れたわけだ。 気がついたらアキラは一代で財を成した成功者になっていた。 その財産を使ってアキラはひとつの企画を思い付いた。本当に強い雀士しか参戦することの出来ない真のプロリーグを設立して、最強とはどういう事かを見せつける。それを映像対局で放送するのだ。「……そうだな、元々雀荘勤めで、給料+αを貰うような次元の連中のみ集めよう。入団資格は雀荘に最低半年勤めて1ヶ月に100打数以上は打つという決まりを設け、その6ヶ月の成績のうち最低でも2ヶ月は純黒(純粋な黒字成績の事。ゲーム代を支払った上でも勝ち切る程の強さを意味する。素人には不可能な超弩級の好成績と言う事)を出すというハードルを設けよう。本当は3ヶ月と言いたい所だが、そうなると僕自身も難しいからな……。あとは、タイトル戦で3つ以上タイトル取ったプロなら無条件で資格ありにするか。 名前は真・麻雀プロ団体【プラスアルファリーグ】なんてどうだろう。 それで、プラスアルファリーグはチーム戦にするとか。チームごとに競い合うプロリーグなんて今まで無かったからそういうのも面白いよな。プラスアルファリーグに参戦可能な資格を持った雀士たちをこちらが野球のドラフト会議みたいに取っていく。そんな仕組みにしたりして、うん面白い、やばいなアイディアが止まらない。 ……アイツらとは別チームになりたいな。やっつけてこそのライバルだ。でも同じチームにいたら心強いし、あー、アイツらどうしよう」とアキラは夢を膨ら
98.第三十伍話 ソクラテスとプラトン メタは近頃ダイエットを頑張っていた。 飲み物は水にして大好きなコーラを飲むのを止めた。それだけなのだが、これはかなりの決意だった。だってそれまでは飲み物はコーラしか飲まないのかと言うくらいコーラを飲む男だったのだから。 アヤノはそのダイエット意識が嬉しかった。それはつまり今まで気にしていなかった自分の外見を気にし始めた証拠だから。「ウフフ。メタさんがんばってね。はいお水」「ありがとう」 アヤノは上機嫌で今日も富士2のキッチンに立つのであった。◆◇◆◇ 一方その頃、アキラは一冊の本を作っていた。それはコテツたちから学んだ戦術や所作、自分の考えなどをまとめた麻雀指南書である。アキラはアキラのやり方で麻雀を生業にしたかった。 アキラの麻雀は確かにピンのフリー雀荘でコテツやメタのように勝ち切る強さは無かった。 しかし、それと同時に負けない。それにおいてはアキラは2人より優れていた。4位にならない麻雀。なので優勝はしなくとも成績上位をキープすることは可能でネット麻雀界では平均成績上位に必ず食い込んだ。 あれよあれよと昇段していきアキラの段位が最高段位に上がりそうな頃。コテツの弟子の丸山圭一郎はプロ新人王を獲得していた。それをきっかけにアキラも日本プロ麻雀師団に入団を決意。 丸山圭一郎の麻雀をコテツの麻雀と見立て、それに勝つつもりで挑んだ競技麻雀の世界だった。しかし、この競技麻雀の世界というのは長い目で見て勝てばいいというアキラ向きの世界であったので丸山圭一郎と対局を果たすことすらなくあっという間に追い抜いて上位リーグ入りをした。 優勝はしないがいつでも3位4位あたりにいる不気味な存在として『ブロンズマニア』という不名誉な二つ名を名付けられつつも確実にその実力を見せつけたアキ
6.第六話 計算女王 シオリ シオリは計算機のような女だった。一流大学大学院まで行って化石の研究チームにまで入って勉強していたが時給の高いアルバイト先の雀荘で「本走入れればもっと時給上がるよ」と言われて麻雀を覚え「プロになればさらに時給上がるし今なら社員旅行で沖縄も行けるよ」と言われたのでプロ試験を受けた。結果はなんと首席合格。大学院は2年で辞めてプロ麻雀プレイヤーとしての道を進む。 シオリは瞬く間に頭角を表した。時給UP&沖縄旅行目当てでしかないのでプロリ
2.第二話 卓上の名探偵「コテツくんは数の概念を完全に理解しています」 小学1年生の1学期にコテツの母が最初に先生から言われた言葉である。それを言われた母は誇らしかったのか、その事をコテツに報告してきた。 コテツは遊んでばかりの子だったが算数はできた。特に図形は得意で、解法を習う前から自分なりの方法で答えに辿り着いたりすることもあって先生を驚かせた。 小学4年生になり図書委員になったコテツは委員の仕事は忙しくなかったのでほとんどの時間は読書をしていた。その時出会ったのが推理小説だった。推理小説の探偵のように一を聞いて十を知るような『名探偵』に憧れて推理ごっこに夢中になる。 中学生
1. 平成の世に後の麻雀界を大きく変える雀士たちがいた。 彼らが運命によって導かれた場所は富士2号店。 そこでは様々な才能がぶつかり合い高め合った。 大都会東京にポツンとある、小さな店の中で起きた壮大な物語がいま始まる。四章 カラスたちの戯れ~麻雀青春物語~ その1 史上最強雀士コテツ編 麻雀を打つやつは全員嘘つきだ。 牌が裏返しなのをいいことに何とかして騙してやろう、裏をかいてやろう。と思っている。 ツモあがりという自力決着を選ぶ時もあるが、アガリ率が高くなるにこした事ないのでたいしたロスなく騙せる手順があるならそちらを選ぶものだ。 これは、そんな騙し騙されの駆け引きに
ごきげんよう、彼方です 今回の舞台は『雀荘』 高レートともノーレートとも競技麻雀とも違う普通の雀荘。 普通の雀荘とはどんなものかをこの物語で知ってもらえたらなと思って筆をとりました。 これを読んで、雀荘楽しそうだなとか行ってみたいな、なんて思ってもらえたら幸いです。◆◇◆◇もくじ➖️メインストーリー➖️第2部 麻雀烈士英雄伝最終章【カラスたちの戯れ】➖️表紙イラスト➖️しろねこ。◆◇◆◇ 今回の物語は作者が一番最初に書いた物語です。なので主人公が作者自身であったり、ほぼ実話であったりと、若干恥ずかしくもある小説で、一番思い入れの大きな作品です。そんな『牌神話〜麻雀







